普段日常アニメを見ている私は、Amazon Primeで次に視聴するアニメを探していた。様々なアニメのあらすじをざっと眺めている中でふと興味が湧いたアニメがあった。その理由はプログラマが題材ということだった。私は趣味程度ながらもプログラムを書くことが好きなので、”プログラマ”というワードに見事に引っかかってしまった。
そして私は普段ミステリー系の作品を見ることがほとんどなかったので、非常に興味が湧いていた。つまり「すべてがFになる」の重力に引っ張られていた。
そして全11話を視聴した結果。小並感ではあるがとてもおもしろかった。視聴しながら思考を回転させ、犯人は?トリックは?どんなロジックで、どの瞬間に犯人は……など様々なことを推察していた。
そのトリックは見破れない
冒頭でもあらすじを記載したが、天才プログラマである真賀田四季は殺害される。このアニメの主人公犀川創平と西之園萌絵は真賀田四季が住んでいる孤島の研究所に行くが、その日殺害されてしまう。二人は研究所の人間から様々な情報提供を受けながらこの事件の真相を推理する。
物語が進むごとにあらゆるヒントが与えられる。視聴者もまたそのヒントを頼りに様々な推理を行うことになる。しかしこのミステリーのトリックを明らかにするのは恐らく難しいだろう。視聴者は思考を巡らせ可能性を探る。単純な発想を行ってはその裏側を探る。そして更にその裏側を考える。
普通はそうやって視聴者の考えた推理が完全じゃないながらも正解にかすっていることもあると思う。だけど多分この作品の推理は正解にかすらない人が多い気がした。少なくとも私はかなり外れていた。
だからぜひ、この作品であなたの推理力を試してみて欲しい。きっと推理目当てだけで見ても面白い作品だろう。
真賀田四季、狂気性にある重力
真賀田四季は天才である。その天才性はプログラムだけに発揮されるものではない。彼女はあらゆる知識を持ち合わせる上に、その知識は彼女の中で噛み砕かれ、知恵となっている。そして彼女の頭は膨大な知識と知恵、そして凡人には100年かかっても理解し得ることのない独自の哲学で満たされている。
彼女の中にある狂気性は知的好奇心から来る部分もあるのだろう。いわゆるマッドサイエンティスト的でありながらもその天才性に人々は魅了されていく。それは彼女と同じような性質や気質を持つものであればあるほどその重力に引っ張られていくのかもしれない。
彼女の哲学は非常に興味深くて、そして考えさせられる。
彼女が言った言葉の一つを紹介しよう。ある場面において彼女はこんな事を言った。
「自分の人生を他人に干渉されたい。それが愛されたいという言葉の意味ではありませんか」
”愛されたい” この心理的欲求の意味をそう解釈するのは純粋に感心させられた。彼女の言葉は全てが考えさせられる。意味のない言葉なんて一つもないかのように。
だけど、彼女はいう。
「私には正しい。あなたには正しくない。いずれにしても正しいなんて概念はその程度のことです」
彼女はとても俯瞰的な視点を持つ。自分はこうだけど、他人にとっては違う。そんなことはとうに理解している。そして自分の考えを押し付けることもしない。それに意味がないことも知っているからかもしれない。
自分は何者なのか、意味があるかないか、人生とはなにか、様々な哲学を彼女の言葉と行動を通して視聴者にビシバシ突きつけてくる。真賀田四季自信は押し付けてはこないが、作品自体は思想の強いメッセージ性を受け取ることになる。だが、それは決してカルト的、宗教的なものではなく死生観、人生観などの”動物として”の根源的な部分を考えさせてくれるものだ。
プログラマに刺さりがちな言葉
私はこのアニメに出てくるRed MagicというOSに非常に興味が湧いた。UNIXよりもはるかに高性能かつ便利で完璧なシステム。そしてRed Magicを介して動く研究所のシステム。Red Magicのバージョン4,そしてバージョン6。16進法、スクリプト、クロック、変数、ネットワークは外部から遮断されている……
こんな感じで、プログラマに刺さりがちな言葉が散りばめられているので何となくワクワクする。非プログラマの方はこの辺の言葉で一瞬理由がわからなくなるかもしれないが、まぁ大丈夫。理解していればもっと面白いけど理解できなくてもこの作品の面白さの核はプログラムの部分じゃない。
プログラマやネットワークエンジニアの方は散りばめられたシステム系の言葉を楽しみ、非プログラマの方はそのへんはなんとなーくでわかったふりして視聴すれば大丈夫。
気持ちが重くなりすぎないように配慮された演出
人が死んでしまう作品というのはどうしても作品のテイストや雰囲気が重くなりがちだ。正直な話、私自信は(年齢を重ねるごとに)重い作品やシーンが見えなくなってきている。だってなんか心がズーンと落ちてしまって気分が暗くなってしまうから。
しかしそんな私でもこの作品は最後まで見ることができた。というのも、この作品はシリアスなシーンはしっかり重さと恐怖を感じる演出がなされているが、それ以外のシーンではちょっとしたギャグ、ちょっとした恋愛要素などで息抜きが施されている。
こういう重い作品にありがちなのは全体的に絵の彩度を暗くすることで、見栄えからどんよりとした雰囲気を醸し出すことが多い。だが、「すべてがFになる」では、色彩などは全体を通して比較的明るい状態を保っているし、音楽などもやたらめったら暗くさせるようなものではないので、安心して見れた。
重くなるどころか、謎が気になりすぎて次々と新しいエピソードを見てしまうほどだ。ちなみに私は全11話を3日で見終わることができた。早い人は多分1日で見終わる事ができると思う。
ミステリーをもっと見たくなった
今回「すべてがFになる THE PERFECT INSIDER」を視聴してミステリー作品が予想以上に面白かったので、もっと色々なミステリー作品に触れてみたいなと感じました。アニメに限らず小説も面白いものがたくさんあるはずなので調べてみようと思います。
みなさんも、おすすめのミステリー作品(アニメ、小説等問わず)をご存知であればぜひ教えて下さい!
ということで、今回は「すべてがFになる THE PERFECT INSIDER」のレビューでした。興味本位で見たら普通に面白かった作品でした〜。